「橋下化する日本」に未来はあるのか?
代議制を否定する政治家の落とし穴
藤井聡(内閣官房参与)×適菜収(作家)の新春放談 「2017年、日本はどうなるのか?」第5回《集中連載》
高機能広汎性発達障害/ASDが世界を救う
藤井 いずれにせよ、今の日本は世も末、の状態。日本も終にここまで来てしまった。
適菜 ここまで来て覚醒しなかったら危険です。
藤井 子供はゼロからスタートします。が、橋下化した世界、全体主義化した世界では、ほとんどが大人になるにつれて劣化して、良し悪しのわからない分別のない人間になっていく。でもその中に、空気を読まない、(精神医学の世界では)「高機能広汎性発達障害」や「ASD」などと呼ばれる人たちがいる。彼らは、定義を広くとるとだいたい10人に一人くらいはいる。彼らの特徴は空気が読めない、あるいは気にしないこと。だから彼らは世界がどれだけ全体主義化、橋下化していても、「正しいこと」を言い続けてしまう。
適菜 発達障害に、未来を託すしかないのか……。
藤井 皆が嘘にまみれた空気に付き従うようになった世界は、もうASDくらいでしか救えないのではないかと思う。おおよそ今の官僚組織で出世するやつは、空気を読むのが上手い。僕は今、学者としてそういう組織に協力しているだけなので、出世は関係ありませんし、まったく空気を読む必要はない。それで「これ、間違えてますやん」とか「ひょっとして、アホですか?」という態度を取ることができる。でもそれをやっていると官僚組織の中では蛇蝎のごとく嫌われます。が、一定のプレゼンスは保ちうる可能性がある。あくまでも可能性、に過ぎませんが。
適菜 なるほど。空気を読まないから「王様は裸だ」と言ってしまう。
※藤井聡(内閣官房参与)×適菜収(作家)新春対談「2017年、日本はどうなるのか?」第6回につづく
【著者プロフィール】
◉藤井聡(ふじい・さとし)
1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授。11年より京都大学レジリエンス研究ユニット長、ならびに第二次安倍内閣・内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)。著書に『大衆社会の処方箋 実学としての社会哲学』『社会的ジレンマの処方箋 都市・交通・環境問題のための心理学』『大阪都構想が日本を破壊する』『〈凡庸〉という悪魔』『超インフラ論』、適菜収氏との共著『デモクラシーの毒』『ブラック・デモクラシー』など。
◉適菜 収(てきな・おさむ)
1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。ニーチェの代表作『アンチ・クリスト』を現代語訳にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(以上、講談社)、『死ぬ前に後悔しない読書術』(KKベストセラーズ)など。安倍晋三の正体を暴いた渾身の最新刊『安倍でもわかる政治思想入門』(KKベストセラーズ)が発売即重版。3月に続編『安倍でもわかる保守思想入門』が発売予定。
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